変形性膝関節症とは

 中高年の膝の痛み(変形性膝関節症)
50歳以上の人が、膝が痛くなって、歩行や階段昇降、正坐やしゃがみこみが、しにくくなった場合、大半が“変形性膝関節症”です。この病気の原因や治療、予防について考えます。

病気の病態(どのようになって痛むのか?)

膝関節は靭帯や筋肉でつながれた2つの骨が蝶番(ちょうつがい)のように動く関節ですが、骨の表面は軟骨で覆われています。軟骨は弾力性がありかつ、表面がつるつるで摩擦が少ないため、クッションの役割を果たすとともに、滑らかな動きができるようにしています。この軟骨が年齢とともにすり減ったり、壊れたりし、関節が滑らかに動かなくなって、“きしみ”をきたしてガクガクしたり、炎症をおこして、腫れや痛みを起こしたりするのです。


どのような症状がおこるか?

1)多くの場合、はじめは、運動や仕事で膝に負担がかかった際に、膝の内側に痛みを感じ、そこが腫れたり、硬く盛り上がったりして、押すと痛みを感じます。人によっては、膝の外側やお皿のまわりに痛みがあることもあります。また、関節の中に水がたまることもありますが、この場合は関節全体が腫れあがります。

2)症状が進むと、軟骨のかみ合わせが悪くなって、膝をまっすぐに伸ばしたり、正坐することが困難になり、階段の昇降や、歩行時にいつも痛みがでるようになります。

3)さらに軟骨がすり減って、骨と骨が当たるようになると、痛みで、長い距離を歩けなくなったり、少し膝を曲げ伸ばしするだけで痛みがでるようになります。


どのような治療をするのか?

1)痛みが出て間がない時には、運動や仕事、階段昇降や正坐をひかえて、安静にすることでよくなります。(痛みが強い場合や、繰り返す時には、痛み止めの薬を使うこともあります。)
この時期に、予防の項で述べる筋力訓練をすることが、病気の進行を止めるのに非常に重要です。

2)歩行や階段昇降でたびたび痛みが出るようになった場合は、症状により、注射や飲み薬を使います。痛み止めの注射は何回もすべきではありませんが、代わりに、軟骨の保護栄養剤(ヒアルロン酸ナトリウム)を関節の中に注射する方法があり、有効な治療法とされています。その他に、筋力訓練等のリハビリ治療も行われます。サポーターをしたり、靴底に敷物をして、膝の負担を少なくする装具を使うこともあります。また、膝の炎症をとったり、血流を良くしたりするための、温熱療法や電気治療、機械を用いての膝の症状が進んで、サポーター等をしても歩行が困難となった時には、人工の関節と取りかえる手術をします。痛みが楽になり、歩行しやすくなりますが、正坐はできません。症状や生活習慣に応じて考えてください。

3)予防について(病気にならないため、また、病気を進行させないための注意)
1)太りすぎの予防
膝には歩いているときで体重の2~3倍、階段昇降で約4倍、立ち上がりの際には、5~6倍の力がかかるとされています。体重を減らすことは有効な予防法です。

2)痛みをこらえて無理な仕事や運動をしない
痛みがでると、膝に力がはいらなくなって膝折れしたり、無理な姿勢で荷をかけたりして、傷ついた軟骨をさらに痛めることになります。痛い時には、階段の昇降や長歩き、体重をかける運動はできるだけ避けてください。

3)膝を伸ばす運動を
軟骨がすり減ってくる原因には長年の膝への負担がありますが、それと同程度に、筋力の低下が関わっています。特に、膝を伸ばす筋力が大事です。痛みが出る前の正常な時には、スクワット(しゃがみこみの姿勢から立ち上がる運動)や、重りをつけて膝を伸ばす運動をして下さい。
変形性膝関節症になってからは、体重をかけての訓練は軟骨を痛めますので、体重をかけないで運動をして下さい。腰掛位や仰臥位で膝を精一杯伸ばして、5~10秒我慢する運動が最もよいと考えます(図)。これを朝、夕二回、一回につき、5回くらいして下さい。また、膝が十分に伸びない方は、入浴時に膝を手で押して伸ばしてください。膝は伸ばすことが重要です。膝がまっすぐに伸びている限り歩けなくなることは殆どありません。
運動時に膝にかかる力
ウオーキング : 体重の 1.1~1.2 倍
ジョギング  : 体重の 3~4倍
スクワット  : 体重の 5~6倍