五十肩とは

五十肩(肩関節周囲炎)

“いわゆる五十肩”は肩関節の病気の中で最も多いもので、痛みや、肩の動きが悪くなるといった症状がでますが、40歳から50歳代によく発症することからこの名前がついています。学問的には肩関節周囲炎とよばれるこの病気の、病状や、治療について述べます。

肩は体の中で最も大きく動く関節で、前後左右に360度大きく動きます。このため、肩では、骨どうしの接触は少なく、多くの筋肉や腱(筋肉の先の、細いすじ状の部分)が支えています。この筋肉や腱に、長年の使用で、“ゆるみ”や“いたみ“がおこり、長時間の運動や、普段し慣れないちょっとした動きで筋肉や腱どうしがこすれたり、骨や関節と擦れ合ったりして、腫れ(炎症)をおこし、痛みをきたすのです。一部でこれがおこると、痛みをさけようとして、肩の動きが不自然となり、他の筋肉や腱に無理がかかって他の部位に炎症が広がり、痛みで動かせない状態となります。炎症はいずれ治まりますが、動かさない筋肉や腱は弾力性を失い、固まって、最後には、他人が動かしても動かない状態となってしまいます。


どのような症状がおこるか?(発症および経過)

初期の症状として、肩をある一定の方向に動かすと痛みを感じます。最も多いのは、エプロンの紐を腰の後ろで結ぶ際や、髪の手入れをする時の痛みですが、普段している仕事やスポーツの際の一定の動作によって痛む場合もあります。病気が進行すると、痛みをおこす方向が増えてきて(たとえば、最初は手を後に回すときだけ痛かったのが、上に挙げる動きでも痛くなり)、日常動作が不自由になり、夜間に痛みきたす場合もあります。それとともに、動く範囲(可動域)も制限され、重症の人では、手を90度以上挙げれなくなることもあります。


予防について

この病気の予防には、仕事やスポーツの前に、肩のストレッチ(肩を一定の方向に回して、少し痛みを感じる時点で10~15秒止める)や、ウォーミングアップ(暖める運動)をした後、徐々に強く動かしていくことが有効です。ただ、痛みがない状態で、このような事を毎日やる人はまれと思われますが、何となく肩が重いとか、ある方向に動かすと少し痛いとか感じた時点で、このような準備運動をすることが予防になるといえます。また、五十肩の発症は決して50歳頃と決まっているわけではありません。40歳でも、70歳でもおこります。普段と違う仕事や、スポーツをする際には、できるだけ準備運動を行ってください。


どのような治療をするのか?

1)急性期(初期)
初期には肩の周りに炎症を起こしているわけですから、無理に動かしてはいけません。「五十肩は動かさないと固まってしまう」とか、「バットを振り回して治した」いう話がありますが、これはもっと後の話です。初期に痛みをこらえて動かしすぎると、どんどん重傷化して治るのを遅らせます。少なくとも3~6週間は、できるだけ動かさないようにして、薬やシップで炎症を抑えます(炎症が強い場合はその部位に注射をすることもあります)。人によってはこの時期でも関節が固まって動きにくくなることもあり、予防が必要ですが、一日一回、入浴して肩を温めた状態で、良いほうの手で支えて、肩をいろいろな方向に動かしてやることで十分かと考えます。

2)慢性期(後期)
3、4週 ~ 2、3ヶ月後になると、痛みは減少し、そのまま治ってしまう人もいますが、多くの人で、関節の動きが悪くなる(固まる)症状が残ります。この時期には、関節の動きをよくする為の体操が重要です。自宅にて、簡単な器具を用いて動かしてもよいです(図)し、病院で電気治療や温熱療法(自宅での入浴も有効)した後、訓練をすることもできます。いずれの場合も、体操後や翌日に痛みをきたさない程度に少しずつ行うことが重要です。急激な運動で炎症を再発させては元も子もありません。五十肩は必ず治る病気です。あせらずに治療してください。


五十肩と間違えやすい病気

1)頚椎神経根症
くびに原因がある病状で肩の周りの痛みをきたし、よく間違われます。くびや背中(肩甲骨部)の痛みや、肩こり、手のしびれがある場合が多いようです。

2)腱板断裂
運動中や運動後に強い痛みと伴に、肩が挙がらなくなります。

3)石灰沈着性関節周囲炎
軽い運動後に、急に肩の腫れと激痛をきたします。