骨粗鬆症について

骨粗鬆症の予防と治療

骨の中のカルシウムが減って骨がもろくなり、骨折しやすくなった状態を骨粗鬆症といいます。背骨や、足の付け根、手首等が、折れやすくなります。足の付け根が折れると、3割が寝たきりになるとされ、残りの方にもかなりな障害が残ります。また、背骨が折れると、背中が曲がって内臓を圧迫したり、歩行が困難なったりします。また、一度背骨がおれると次の1年間に再び背骨が折れる割合が、骨折していない人の5~10倍高くなります。
当院では今までは、骨折した方の治療のみを重点的に治療してまいりましたが、高齢期を元気に過ごすために、骨粗鬆症の予防と治療にも力を入れなければならないと考えています。



なぜ骨がもろくなるのか?

骨は一見何も変化していないように見えますが、常に、古い骨がこわされ、新しい骨が作られています。カルシウムの少ない食事や運動不足の人では、新しい骨があまり作られなくなり、骨がもろくなります。又、女性ホルモンや、ビタミンDやK は骨をこわすのを予防したり、カルシウムの腸からの吸収を良くして、骨が弱くなるのを防ぎます。ですから、更年期を過ぎた女性や、偏った食事でビタミンが不足している人は、骨がもろくなるのです。


骨粗鬆症になりやすい人

・更年期を過ぎた女性
女性ホルモンが減少し、骨の吸収が増えます。

・高齢者
運動不足やホルモン(男性では副甲状腺ホルモン)の影響によります。

・かたよった食事
ダイエットや糖分の多いファーストフードは骨粗鬆症の原因です。

・運動不足
新しい骨が作られるには、骨に力の刺激が必要です。

・病気
卵巣や胃腸の手術をした人、リウマチや糖尿病、甲状腺の病気の人は要注意です。

・遺伝
この病気には遺伝性があります。お母さんの背中が曲がっていた人は要注意です。



検査について

1)レントゲン検査
骨折の有無、骨の構造をしらべます。

2)骨密度測定
骨の密度の測定(当院では手首の骨で調べます)。若い頃との比較でみます。若い頃の骨の量の70%以下では骨粗鬆症と判定します。

3)血液検査、尿検査
骨の減少が、どのような原因で起こっているのかを判定します。また、薬の効果があるかどうかの判定にも用います。



骨粗鬆症の予防

1)バランスの取れた食事 (特にカルシウムの不足に注意)
成人では、一日に700~800mgのカルシウムが必要とされていますが、日本人の平均的な食事では約200mg (牛乳一本分) が不足とされています。青少年期には骨をたくさん作るため、さらに多くのカルシウムが必要です。カルシウムの他に、ビタミンD やビタミンK も必要です。どのような食物にカルシウムやビタミンD、K、が多く含まれるかは、パンフレットをお渡ししますので職員に申し出ください。

2)継続的な運動
運動をして骨に力が加わると、その刺激に反応して、骨が作られます。ただし、運動の貯め置きはできません。一度にたくさん運動するより、継続的な運動が有効です。一日7000歩が必要とされていますが、30分程度の散歩でも有効です。また、若い頃の運動経験が将来の骨粗鬆症の予防に有効です。



薬について

1)ビスフォスネート剤
骨からカルシウムが溶け出すのを防ぎ、骨の量を増やす、有効な薬です。過去に骨折のある方(特に脚の付け根や背骨の骨折をした人)に是非お勧めしたいと考えます。一日一回、朝食前にのみますが週に一度飲む薬も発売されました。、胃腸に負担がある場合があるのが難点です。

2)カルシウム剤、ビタミンD、K、の薬
高齢で胃腸の弱い人、や、胃腸の手術をした人、偏食の著しい人には飲み薬を飲んでいただきます。骨の量が減るのを抑制します。

3)骨の吸収を抑える注射
エルチトニンという注射を、一週間に一回筋肉注射します。骨の量が減るのを抑制します。

4)ホルモン補充療法
女性ホルモンを投与する方法で、更年期障害を伴う、骨粗鬆症に有効です。乳癌等の発現率が高くなるため、定期的な検診が必要です。当院では施行しておらず、ご希望がありましたら鳴門病院婦人科を紹介いたします。

5)女性ホルモン類似薬
女性ホルモンと同様に骨吸収を抑制し、骨量を増やしますが、更年期障害には無効で、骨粗鬆症のみに有効です(乳癌の心配もありません)。胃の弱い方でビスフォスネート剤が飲めない方にお勧めします。



終わりに

適度な運動をして、筋力をつけること、反射神経を保つことは、骨粗鬆症の予防のみならず、転倒予防、成人病の予防にも重要です。薬のみにたよらず、日常生活の中で、できる範囲で適度な運動を心がけましょう。